皆さん、こんにちは。

せわのわ訪問看護ステーションで主任をしている看護師の稲澤です。

 

皆さん「デスカンファレンス」という言葉をご存知でしょうか?

 

私自身、「デスカンファレンス」という名前を耳にしたことはありましたが、病院勤務時代はほとんどそのようなカンファレンスをしたこともなく、どのようなものなのか具体的なイメージも持てていませんでした。

 

今回、せわのわで担当をさせて頂いた、ある利用者さんとの関わりをキッカケとして、担当医である『TOWN訪問診療所』院長の宇都宮先生と一緒にデスカンファを実施しましたので、私自身の振り返りもかねて、そちらのご報告をさせて頂きます。

 

 

▼「デスカンファレンス」とは?

 

デスカンファは、主に看取り・終末期医療に関わる医療者を対象に行われています。

日々、たくさんの業務に追われる終末期医療の現場では、患者さんのお看取り後に十分な振り返りを行う時間を取ることが難しく、それも形式的な形で終わってしまうことが多くなってしまいがちです。

(そうなってしまうのはとてもよく理解できます…)

 

そこで、患者さんの看取りに関わったスタッフの、今後のケアの質の向上、ひとりひとりの成長の支援、患者・ご家族への理解を深めるを主な目標として、しっかりと時間を取って行われるのがデスカンファとなります。

 

また、ご利用者と中~長期に渡って関わりをもつケースもある在宅の現場においては、担当してきたスタッフたちの気持ちの整理を助け、喪失感の棚卸しをする役割もあるのかなと感じています。

 

 

▼ケースの詳細

 

今回、デンスカンファでの事例となったケースのご紹介です。

 

ご利用者は60代の男性。

腎不全の末期で、週3回の透析を受けている方で、足の状態も悪く、足から全身に感染しないよう毎日の洗浄もしていました。

独居でご家族はおらず、生活保護を受けていたので金銭面の兼ね合いで在宅に戻らざるをえないといった事情もある方でした。

お酒・タバコが好きで、それは最期まで続きました。

 

ケアチームは、私たち訪問看護が連日(週7回)入り、あとは、往診の先生、ヘルパーさんが1日に2回、ケアマネージャーさんも入っていました。

 

結果として、介入の期間は1ヶ月程でした。

ヘルパーさんが訪問をしたところすでに亡くなっていて、それでうちのステーションに連絡が入り、往診の先生にも連携をして死後の処理を進めていきました。

 

私たちとしても、亡くなり方が突然だったように感じられたこともあり、自分たちの介入に見落としがなかったのか?改善点はあったのか?といった振り返りをしたいと考え先生に相談をしたところ、二つ返事で「OK」といった回答があり、その後はトントン拍子でデスカンファの開催へと進んでいきました。

 

 

▼デスカンファにおける事前準備と進行

 

デスカンファの開催が決まった後、場所は弊社に決まり、ケアチームにも開催の連絡をしました。

 

デスカンファでは、あえて事前準備に手間をかけすぎないよう意識をしました。

特に進行の流れやアジェンダも決めず、配布書類の用意などもしなかったです。

今後も適宜このようなカンファを開催していくにあたって、事前準備に時間をかけすぎると開催に対して後ろ向きになっていってしまうかと考えたからです。

(結果として、これは良かったと思っています)

 

デスカンファの当日は、先生を中心として、介入をしたスタッフそれぞれの振り返りについて話し合うことができました。

 

振り返りをしてみて分かったことは、先生は「もう長くはない」と考えられていた、しかし、それが看護・介護のチームには十分に連携ができておらず、死後の進め方の方針についても目線合わせが不十分であったことで混乱も生じてしまったということでした。

 

時間としては1時間足らずでカンファレンスは終了しました。

私たち看護チームもデスカンファに慣れていない者ばかりで、進行について先生に頼りっきりのような形になってしまったことは次回に活かしたい反省点です…。

 

 

▼デスカンファからの学び

 

総括として、今回のデスカンファを通じて学ぶことができた点は大きく3点でした。

 

1)ACP(※)の大切さ。

※ACP(Advance Care Planning):ご利用者もしくはそのご家族が、今後の意思決定能力の低下に備えて、事前によくよく話し合い、意思決定プロセスを決めておくこと。

2)意思決定していくタイミングの難しさ

3)チーム内での連絡調整の難しさ

 

また、メンバーそれぞれが、その方のために精一杯尽くしたという思いを共有することができ、医療者のグリーフケアをすることもでき、これからも頑張っていこうという気持ちを持つこともできました。

 

ひとりのご利用者に様々な職種の方が連携をとりながら関わっていく在宅の現場において、他職種の方々がどのように考えながら、ご利用者の最期に向き合っていかれているのか、といった話を聴けたことはとても貴重な場だったと思います。

 

 

その方の最期まで寄り添うことができることは、在宅・訪問看護における大きなやり甲斐であると同時に、とても大きなプレッシャーでもあると感じています。

 

だからこそ、ひとりで悩み・抱え込むことなく、こうやって皆で話し合いながら、より良いお看取りを目指していくことは、私たち医療・介護者にとっても大切な場なのではないでしょうか?

 

「せわのわ」では、今後もデスカンファを続けていきたいと思います。

 

 

看護師:稲澤